早朝のあるアパートの一室、日差しはフライパンの前にいる1人の可愛くて美しいOLを照らしていた。
その才色兼備で欠点がないことが欠点のOLは料理をしていた。
「綺麗に焼けたぞ!」
フライパンには餃子が弧を描くように並べられていた。ただの餃子ではない、羽付き餃子だ。
ここで自己紹介をしておこう。私は羽付き餃子を綺麗に焼ける綺麗なOL、焼却炉あずさだ。
職場では無能だが、餃子料理だけは自信がある。もしも羽付き餃子部門があれば私が部長になるだろう。
私は羽付き餃子をお皿に移し、そのまま居間へと移動した。
「いただきます!」
私は羽付き餃子の"羽を全てを退けて"から餃子を口へと運んだ。
「いやこの旨味がたまらんすわ」
野菜、肉、ニンニク、そして自分への愛情からできた餃子は私の胃へ収まる。こうして餃子は血となり肉となり私になる。
私はいつも通りの餃子の旨みを味わい完食した。
こうしてお皿の上には餃子の羽だけが残った。
「じゃあ、そろそろ行きますか!」
私は皿の上の羽をつまみ、身体に纏った。
餃子の羽は背中にフィットし、一瞬で私の一部となった。
そう、私は餃子の羽で空を飛ぶ女。私には電車も翼を授ける飲料もいらない。翼は私が作るのだ。
「いってきます!」
扉を開けて私は餃子の羽を羽ばたかせて会社へ向かった。
「部長!失礼します!おはようございます!」
「焼却炉さん。おはよ…にんにく臭っ!」
「すみません。通勤手段餃子なんで……」
「何度言ったら分かるかなぁ。私はね、にんにくの臭い無理なんだよ。業務も下手だし…今日という今日はもう耐えられない。君には仕事をやめてもらおうか。」
こうして私はクビになった。
いや、自由になったのだ。
私は餃子の羽を広げ、会社の窓から飛び出した。
自由になった私の前にはもう人間もビルも見えない。
見えるのは空を飛ぶ自分。
私の視界にあるのは灰色の地面。道路標識、道草。
私の血液。瞼の裏側。
あと、ずっと何もないの。
私の身体からは餃子が検出されたんだって。
毎日食べてたもんね。
終わり。